株式投資の要諦は企業価値の本源と市場の動きを決める要因を理解すること
トランプ政策と株式市場
トランプ米大統領が誕生して3か月。公約通り関税引上げに着手しているが、今後、日本経済・株式市場はどうなるのか、(株)つかさ長期投資研究所の田倉氏にお聞きした。
MAGA(米国を再び偉大に)を掲げるトランプ政策をどのように見ていますか。
トランプ大統領の就任からニか月余りですが、ご存じの通り、その間に従来の政策が大きく転換されています。懸案のウクライナ問題に続き、関税の導入は世界経済への影響が懸念されており、株式市場にも大きく影を落とす状況となっています。
個人投資家にとって、予測が困難な情報が押し寄せる中で、市場とどう向き合えばよいか大変難しい局面にあるといえます。そこで、ここからの株式投資を考えるうえで、どのようなポイントを押さえるべきなのかについて整理してみました。
まず、震源地ともいえる米国の株式市場について考えてみます。株式の教科書が教える通り、米国株式は長期にわたり高いリターンをあげていますが、今後とも生産性向上によりキャッシュフローを創出する企業が株式市場の上昇を支えると考えられます。また、トランプ政策の意図が米国の競争力向上という点にあって、世界最大規模の国内市場を活性化して製造業の復活を企図していることは、いずれ米国企業の成長を後押しする要素ともなるとみられます。したがって、長期的な視点で米国株式をみれば、投資対象としての魅力に大きな変化はないといえるでしょう。
米国株の更なる調整余地は限定的!?
日本株式への投資はどう考えますか。
日本の株式市場は米国株式市場の影響を強く受けるので、米国の株式相場が安定しない限り、日本株式には下落リスクが伴うでしょう。日々の株価変動に晒されている投資家にとって、「長期的には報われる」という示唆は、必ずしも現実的なものとはいえず、より短期のスパンで市場動向を捉える視点が求められるところです。
その点、近時の米国株式のPERは歴史的にみて高水準にあったため、調整局面が長引いても不思議はないといえます。一方、米国の金融イノベーションが株式の取引コストやリスクプレミアムを低下させているとの考えは、株価の更なる調整余地は限定的という見方に論拠を与えています。
今後の株式市場の動きを決める要因は何でしょうか。
株式投資の要諦はイノベーションや経営力といった企業価値の本源を考えることにあります。同時に、株式市場の動きを決めるマクロ的な要因を考えると、中央銀行の金融政策が極めて重要といえます。この点、トランプ大統領はFRBに明確に利下げを求めており、関税引上げの経済へのマイナス影響を打ち消すと共に、株価の下支え役を果たすことを強く求めています。
したがって、FRBの金融政策に今後とも利下げバイアスが維持されることが明らかになってくれば、米国株式市場の本格的な下落相場入りは回避されると考えられます。
その場合の日本株式の見方ですが、現状、①少子高齢化という成長の壁、②中央銀行の引締めバイアス、③米国関税のマイナス効果など、総体として米国株式に比してかなり厳しい局面にあるといえます。勿論、個別企業では、環境変化に適応できるビジョンを持った経営者に期待はできるでしょう。しかし、現在の環境では、米国中心の海外株価指数への投資の方に、依然優位性があると言わざるを得ないと考えます。