米国経済にとって重要な金融市場の安定
株式市場は米国とイスラエルによるイラン攻撃の悪影響を懸念する動きとなっているが、ここからの株式投資の視点を(株)つかさ長期投資研究所の田倉氏に聞いた。
イラン攻撃に踏み切ったトランプ政権の今後の対応をどのように見ていますか。
「今回米国が仕掛けた対イラン戦争に関し、次のような構図が明らかになりました。まず、戦争遂行についてトランプ大統領の発言に主体性が乏しい状況から、トランプ政権が親イスラエルの政治的ロビー等の影響下にあり、トランプ大統領自身がこの流れには抗えないという図式です。そして、このような政治ベクトルを抑え込める要因としては、金融市場のリアクションがあげられるでしょう。今後イランへの戦闘が株式市場の更なる下落を招く場合には、米国経済にとって大きな重石になるだけでなく、トランプ政権への打撃となるため、いずれ収束に向けた対応を模索せざるを得ないと考えられるからです。」
「遡って20世紀の世界大戦は、発展する重化学工業を背景に、自国の利益のために他国・他民族を植民地化する帝国主義が対立したことによるもので、実物経済の利害がその動機であったと言えます。一方、今日の米国においては、情報通信やAIの拡大などのサービス分野が利害の中核にあって、それによる株式市場の上昇と資産効果が経済成長のドライバーであるため、戦争を継続し金融市場の混乱を放置することに経済合理性はないと言えるでしょう。」
成長投資が鍵を握る日本株式市場
米国経済の特性から戦争状態が長期化する可能性は高くないとしても、不透明な市場環境下で日本株への投資スタンスはどのように考えていますか。
「短期的な株式市場の変動を別にすれば、投資理論が教える通り、株式価値とは企業が将来的に産み出すキャッシュフローを現在価値に割引いた総額として捉えられます。具体的には、企業はインプットである産出要素(資本と労働)を投入(投資)してアウトプットを追求しますが、この投入と産出の差が付加価値であり、企業の利益の源泉となります。これがまさに『稼ぐ力』であり、一国の経済で見ればGDPに当たるものとなります。」
「アベノミクス以降の日本の株式市場は13年間で約4倍強に上昇しており、年率で12%近い極めて良好なリターンを見せています。ここで、株価の動きを客観的に整理し、その妥当性と今後の持続性について考察してみます。」
「この間の東証株価指数の一株利益は、年率9%近い伸びとなっており、株式市場は利益成長を上回るような株価上昇が実現しています。業種では、近年のAIに対するグローバル需要の拡大に支えられた半導体関連がリードする形で、日本企業は投資を積極化しアウトプットを拡大することで投資家の期待を高めることに成功したといえるでしょう。また、この間の日本経済の名目成長率は年平均1.5%程度に留まっていますが、為替が年率5%もの円安傾向にあったことから、企業の利益成長は、海外での利益拡大と円安効果に支えられてきたということができます。」
「以上を俯瞰すれば、今後の見通しもシンプルなものとなります。積極的な投資により成長というアウトプットを実現できる企業の株価は上昇するという基本原則です。一層の円安という増益要素の継続性については留意が必要ですが、日本の株式市場の上昇は、グローバルな成長領域への投資姿勢に掛かっているとみています。」
